第4回「さかなクンともぐらんぴあの物語 書籍販売について」
「ボク、もぐらんぴあ 応援団長はさかなクン!東日本大震災で全壊した水族館の物語」
この本を見たことのある人や、手に取ってパラパラとめくってみた人にとって、この本はどんな本なんだろうと思う。出版社のご努力によって、私たちの創造を遥かに超えた立派な本ができた。さかなクンの献身的で地道な取組みも、全部ではなかったが記する事ができた。私達も、念願だったさかなクンとの本を初めて出版できた喜びは大きかった。嬉しさが沸々と湧いてくる感じがある。
もぐらんぴあは東日本大震災で全壊してしまったけれど、応援団長になってくれたさかなクンの信じられないような行動力によって、私達は諦めずに前に進むことができた。この本にはそんな思いが込められている。私達は震災した当事者として、大震災の被害や思いを求められるまま語ってきた。災害によってこうなった、こう思った。それが皆さんにどう受け止められるのかという事は、全く考えなかった。この本は、被災してから復興するまでの出来事を、初めて他人が客観的に記したものである。さかなクンの行いと私たちのあり様が、本を手にとってくれた人たちの冷静な目にさらされる事になった。今まで客観的に被災体験を考えた事が無かったので、不思議な気分である。
もちろん、はしゃいでいる訳ではない。震災から8年を迎えたが、未だに多くの被災者が被災地や避難先で、不自由な生活を強いられているという現実がある。職場を失っただけの私達だったが、それでも精神的にかなりきつい時期があった。でも期間が短くて済んだ。さかなクンがいてくれたことが、幸運だった。それでも精神的なダメージは5~6年は続いた。それほど大変な出来事なのである。
被災された皆さんの中にも、私達と同じような体験をされた方がたくさんいらっしゃるのではないかと思う。私達が特別という事ではない。このように本を出版できたのは一重に、さかなクンが所属する事務所のI社長の、忍耐心に溢れた理解をいただいた結果であると受け止めている。当初、さかなクンと久慈の海のお魚図鑑をイメージした取組みを勧めて下さったが、、予算が全くないこともあり、取組みが遅々として進まなかった。途中何度か進行状況を尋ねられたが、返答に困るような進み具合だった。2年も経ったある日、「全国に売れるような本にしたいのか?」「関連施設への配布を主とするのか?」とI社長から問われ、まったく自信はなかったが、「全国の人に読んでもらえるような本」と、おずおずと答えた。「わかった」と、I社長の一声で現在に至るのである。どうしてI社長は待ってくれたのか?理由を聞いた事はないが、待ってくれたことがさかなクンと震災復興の要素を編み込んだ本の出版につながった。私達の力だけでは、どうにもならなかったことを象徴する本でもある。I社長、さかなクン、本当にありがとうございました。
この本によって、多くの子ども達に笑顔が届けられれば幸いに思う。
次回は「南部潜りの実演」について伝えていきたい。